のみもののよみもの

第4話前編n.e.o
プロフェッショナル
プレミアム ジンジャーエール

登場人物

岩永大志

Bar Loop

岩永大志

今村隆虎

コックソース株式会社

今村隆虎

友田諭

株式会社 友桝飲料

友田諭

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ジンジャーエールの原料は
ジンジャーじゃない!?

みなさん、ジンジャーエールが何からできているか、ご存知ですか。

「ジンジャーエールだからジンジャー(生姜)でしょ?」と思われている方も多いと思いますが、
一般的に流通しているジンジャーエールの多くは、香料と酸味料で味付けされている炭酸飲料です。

原料表示をみてもジンジャー(生姜)の表記がありません。

今、私たちが飲み慣れているジンジャーエールは、19世紀のイギリスにあった
ジンジャービア(ginger beer)をヒントにカナダで開発され、世界中に広がったものだといわれています。

しかし、それでは困るという人たちがいました。

Barのイメージ

すべては、一杯のモスコミュールのために。

福岡の繁華街・中洲でプロバーテンダーを務める「Bar Loop」の岩永大志さんもその一人です。「一般的なジンジャーエールは甘く香りも少ないので、本来のモスコミュールの味とは違うものになってしまいます。本物の生姜を使ったジンジャーエールが必要だったんです」。

モスコミュールとは、オールデイカクテル(食前食後を問わず飲めるカクテル)としてメジャーなカクテルの一つです。ウォッカとライムジュース、そこにジンジャーエールを注いでライムのスライスを一枚絞る、というのが日本における一般的なモスコミュールのレシピですが、本来はジンジャーエールではなくジンジャービアを使います。しかし、入手が難しいため代用としてジンジャーエールを使用したレシピが浸透していきました。

本物志向のプロのバーテンダー達は、海外製のジンジャービアを使用していましたが、缶のサイズが大きいため1杯分を作ると半分は残り、炭酸が抜けて使えない…というのが悩みの種でした。バーテンダー達は本格的なジンジャーエール、それも1杯分の使い切りのサイズを必要としていたのです。

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neo
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業界のタブーを破り、新しい常識をつくる。

「友桝飲料で本格的なジンジャーエールが作れないですか?」。
それが「スワンサイダー」や「こどもびいる」などの特徴的な瓶を見た当時の岩永さんの上司の方からの依頼でした。友桝飲料代表・友田氏にとって、その提案そのものが全く新しい発想だったと言います。

「飲料業界では、砂糖、酸味料、香料でつくるのがジンジャーエールと思っていましたから。そもそも生姜からシロップを作れば、当然、沈殿ができます。炭酸飲料ですから、沈殿を溶かそうと振ると、開けた瞬間に吹いてしまいますから。炭酸飲料は沈殿してはいけない、というのが業界の常識だったんです」。

とはいえ、バーテンダーさん達の長年の想いというものを聞いた友田氏は「それであれば一度詳しくお話しを聞かせてください」と快諾したと言います。「友桝飲料は小さな工場ですが、一人一人の声に細やかに応えられるのは、大きな飲料メーカーではなく、むしろうちのような小回りが利く工場ではないかと感じていました。そもそも弊社の95mlというのが日本で一番最軽量の王冠のビンなんですよ。これはうちでしかできない、オリジナルの商品ですから」。小さいことが、強さに変わった瞬間でした。

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はじまりは、閉店したバーの小さな厨房で。

こうして、本物の生姜を使ったジンジャーエールの商品開発がスタート。監修役として白羽の矢が当たったのが、岩永大志さんでした。一言に「監修」といっても、ただサンプルを試飲して評価をするだけ、ではありません。岩永さんは、まず初めに商品のお手本となる「理想の一杯」を作りはじめます。バーが閉店してから、一人、小さな厨房にこもり、鍋でシロップづくり。どうやったら風味が豊かになるか、辛味はどうか、生の生姜を刻んだり、摺ってみたり、数種類の香辛料を加えて調整を繰り返しました。それはもはやバーテンダーの領域を超えた作業のように感じますが、それもそのはず岩永さんは元シェフ。レストランバーやパブでシェフとして働いていました。バーテンダーになったのは30歳を過ぎてから。周りに比べて遅いスタートだったため必死に勉強してきたそうですが、そうして遠回りをしてきたからこそ、シェフとしての発想力とバーテンダーとしての優れた味覚を持ち合わせた、岩永さんにしか開発し得ないジンジャーエールのレシピに辿りついたといえます。

Barのイメージ

ジンジャーエールの素となる、ジンジャーシロップのレシピを持って、
岩永さんが向かった先は、博多にある、とある小さな老舗ソース工場でした!?