
第2話「指宿温泉サイダー」後編
登場人物

指宿温泉サイダーの発案者
湯砂菜企画 代表取締役
倉本 哲(文中:倉)

こどもびいるの発案者
有限会社ウィロー代表
浅羽 雄一(文中:浅)

楽しみながら売り、楽しんだ人から広がっていく。
- 商品の広報はどのようにされたんですか?
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倉:
そうですね、大手さんがやるような、いろんなプロモーションをかけたり、有料広告を載せたりというはできなかったので、PRは弱かったんですよ。ただ、当時ブログというのが流行ってきて、みなさんが「ここでこんなものを飲みましたよ」とアップしてくれて。それを見た人がまた指宿でサイダーをアップしてくれてーと繋がってくれて。そのブログをみたバイヤーさんが声をかけてくれて。そこでの取り上げは大きかったかなと思います。
- 商品デザインが魅力的だからみんなが自慢したくなるのでしょうね。
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倉:
そうですね、あとは、地元のお祭りやイベントで販売しました。そこでは儲かりはしませんでしたが、みんな一緒になって売るというのが楽しくてやっていました。自分たちの想いを詰め込んだもの、なので。それをみなさんがいいなといって買って帰ってもらえるのは、嬉しかったですね。
- まずは地元の人たちに愛されて、盛り上がっていったんですね。
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倉:
いや〜、それが、よくそう言われるんですが、もともとハネムーン世代の県外の方々に向けて作ったものでしたし、両親には「ガラス瓶に王冠がついた210円のサイダー!?スーパーではペットボトルで100円きっているのに誰が買うね!」と。でも、反対する両親とドライブがてら雲仙に行って、孫を連れて地獄めぐりしていたら、もう暑い暑いって言って雲仙レモネード(長崎の地サイダー)を飲んどるんですよ。もうそれ見て、飲んどるやんって(笑)。付加価値をつければ、必ず買ってもらえるとその時に思いましたね。
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浅:
売れてメジャーになってくると、どんどん地元の人にも広がってくるんですよね。
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倉:
そうなんですよ。手をつないでいる新婚旅行のイラストなので、結婚式のプチギフトとして配る地元のカップルも増えています。地元のスポーツイベントに持っていくと、みんな喜んでくれますし。「俺、飲んだことあるぞ」って言ってくれるんです。県外で見かけたとか、難波のグランド花月にあったねとか。今は、JR九州の観光列車「特急・指宿のたまて箱」でも販売されていますし、東京のヒカリエのD&Departmentでも販売されています。みんな話題にしてくれますよ。本当にそういう意味で、苦労して自分が地道に売ってきたというよりも、いろんな人に支えられて育てられてきたという感じです。今ではもう、私の名刺にも「指宿温泉サイダー」って書いています。もう代名詞になっていますね。




- お土産屋さんやホテル、道の駅、砂蒸し温泉の施設など、いろんな場所で「指宿温泉サイダー」を目にしました。驚いたのは、多くの売り場で、みなさんが手作りの値札を作り、イラストや宣伝文句を添えて一生懸命、売り場を作っているところです。これは倉本さんの方から呼びかけているのでしょうか。
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倉:
いえ、宣伝ツールは持っていきますが、私からは何も。本当にお店の人がファンになって、やってくれてるんだと思います。自分たちがこの「指宿温泉サイダー」と名前をつけたのも「指宿温泉にきた人たちに飲んでもらいたい」というのもあるんですけど、もう一つは「指宿というものを全国の人にPRしたい、発信したい」ということで、名前をストレートにつけたんです。そこが指宿のみなさんの想いとつながったのではないでしょうか。
- 指宿にいるみなさんでサイダーを育てているように思えますね。
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倉:
ありがたいですね。地サイダーを作る方、作りたいと思う方にはそれぞれ想いがあると思うんですよ。でもその想いが本当に正しいのか、そこが大事なんだと思います。そこで継続して売れるのか、売れないのかの差が出るのかなと思います。よく私にも、地域のご当地サイダーを作りたいと相談にこられる方がいます。その時には「作るのは簡単だよ、ただそれを誰がどこでどうやって買うのかというのを考えてないと、ものは作っても売れないよ」という話はしています。それでもできると思ったら一緒にサポートしています。自分はそれで失敗した経験もあるのでそこは伝えたいですね。



- 誰がどこでどうやって買うのか、それは机の上で考えて分かることではないですね。「指宿温泉サイダー」も倉本さん独自の視点から様々な展開が生まれているように感じますが。
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倉:
そうですね、「指宿温泉サイダー」はギフトが必要だろうと12本のセットにして。次に女性の方や年配の方がサイダーを飲みきれずに残されているのを見て、スクリュータイプのミニボトルを考えました。新幹線が開通するということは、それまではクルマでくる人が多かったから、重くてもクルマに詰めるから王冠の瓶でもいいのかなと。ただ、新幹線となると手荷物になるなら重いのは嫌だろうから、ミニボトルの三本セットを用意しました。三本セットの裏面には、ラベルに描かれた名所の説明も入れています。これは、鹿児島県のコンクールでは奨励賞をいただきました。
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浅:
いやー、販売から10年ほどですが倉本さんの熱意で徐々に広がってきているのが分かります。3年前に子ども達を連れて「指宿のたまて箱」に乗った時に、スタッフのおすすめのアナウンスとともに「指宿温泉サイダー」が販売されているのを見て感動しました。商品の力とブランドオーナーの情熱がうまく合わさった時の力を見ることができました。
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倉:
ありがとうございます。今、JR九州のホームページにも「指宿温泉サイダー」を載せてもらってるんですよ。
- それは、すごいですね。ご自分で営業されているのですか。
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倉:
いえ、新規で個別に営業することはありません。でも、友桝さんが九州サイダーフェスや全国サイダー祭りというのを企画して、福岡や東京など各地の展示会で持って行ってくれますから、自然と販路が広がることがあって。本当に助かっています。







- タオル、手ぬぐい、キーフォルダー、ステッカー、あらゆる工夫をしてサイダーを育ててきた倉本さんですが、さらなる展開は考えていますか?
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倉:
今は「サイダー割」という新しいサイダーの楽しみ方を提案しています。甘口が好きな人は指宿温泉サイダー割りを、そして、辛口の方には屋久島タンカン果汁を使用したビアテイスト飲料「SAIGO」で割る「サイゴー割」をオススメしています。鹿児島の焼酎も宮崎の勢いに押されてきていますし、今の若い人は昔のようにお酒をあまり飲まなくなってますから。指宿温泉サイダーと焼酎のセットで販売をすることで、鹿児島の焼酎もアピールすることができます。次の大河ドラマは「西郷どん」ですし、盛り上げていきましょう。
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浅:
そうですね。次は、シャンディーぽいものにしたらいいのかなー。焼酎のジンジャー割とかもあるし。まぁ、いろいろ考えていきましょう。


最終的にはいつも具体的な商品企画で盛り上がる二人。
帰りに倉本さんからいただいた手土産の袋の中には、浅羽さんが「これいいな」と
迷いつつも買えずにいた西郷さんの貯金箱がこっそり入っていました。
いつも心にアンテナを立て、周りの人のこと、指宿のこと、鹿児島のことを考えている。
やっぱり倉本さんは西郷さんに似ているなと思ったのでした。

指宿温泉サイダー
内容量:330ml
・お土産店 ・ネット通販
などでお買い求めいただけます。
これまでの のみもののよみもの
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