のみもののよみもの

第7話前編「frula フルーラ」

登場人物

横松鈴菜

株式会社 友桝飲料

横松鈴菜

浅羽八智代

有限会社ウィロー
グラフィックデザイナー兼イラストレーター

浅羽八智代

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青いガラス瓶、ビー玉をポンっと押すと、シュワっと泡立ちながら、瓶の中へと落ちていくー
お祭りや駄菓子屋さんでよく目にしたラムネに、新しい魅力をプラスして生まれ変わったのが「フルーラ」です。

グラフィックデザインを担当したのは、ウィローの浅羽八智代さん。花嫁さん達に人気のラムネになったのは偶然だったのだとか!?
広報課の横松鈴菜氏も交えて詳しくお話しを伺いました。

明治創業から続けてきたラムネの製造販売 明治創業から続けてきたラムネの製造販売

「ラムネは大切な商品」
だからこそ、変えたかった。

明治創業からラムネの製造販売を続けてきた、友桝飲料。
戦時中には製造を断念した時期もありましたが、戦後、軍艦に搭載されていたラムネ充填機の買い付けに成功したことで復活。
それから現在に至るまでラムネを作り続けています。

「ラムネは私たち友桝の原点ともいえる商品です」そう語るのは広報の横松さん。
なぜ、そのラムネを変えようと考えたのでしょう。
「私たちとしては、ラムネはどこが作っても同じ、という常識を覆したかったんです。他とは違う個性を持ったラムネを作りたい。
そんな想いから13年程前に新しいラムネづくりがスタートしました」。

友桝飲料で代表を務めていた友田氏は「こどもびいる」「スワンサイダー」を手がけたウィローの浅羽雄一さんと
その妻でありグラフィックデザイナーである八智代さんにラムネのリニューアルを相談したそうです。

「ラムネは美しい」
だからこそ、変えたくなかった。

ところが八智代さんは…「うーん、ラムネってラベルも何もない状態が一番キレイ。だから一度『こどもびいる』のようなレトロなイラストを描いてみたけど全くピンとこなかったんよね」とラベルを変えることに異を唱えたのです。改めてラムネ瓶を見てみると、確かに造りは実に巧妙で遊び心があり、なにより情緒を感じます。こんな飲み物は他にはなかなかありません。「実はこの時の八智代さんの意見を反映させたのが、のちに装い新たにリニューアルしたラムネ商品『スワンラムネ(通称:Kラムネ)』なんですよね。当たり前になって忘れていたラムネの価値に改めて気づくことができました」と横松さん。ありそうでなかった美しいラムネが誕生しました。ラムネの美しさを再確認した上で、さらに個性的なラムネづくりに挑戦します。

「美しいラムネ」をより美しく、
Beautifulに。

その頃、他社でも差別化を狙いカレーラムネやわさびラムネ、キムチ、たこ焼き…など色んなラムネが開発されていたのだとか。駄菓子屋さんの延長線上にあるユニークなものが多い中、「ラムネは美しいもの」と確信している八智代さん達は、それらとは全く異なるアプローチを提案します。それが「美しいラムネを『和』から『洋』に変えてはどうか?」というものでした。「海の向こうの人から見たら、このラムネの瓶ってキレイで好きやろうけん。当時、麻布の海外食料品専門スーパーマーケットに置いてもらえる商品にしようと思って」と八智代さん。提案されたラベルは全て英語表記(原材料等は日本語)、ストライプのキャップシールにポップなカラーリング…一瞬ラムネと気づかない人がいるほど、それは斬新なデザイン。これまでのラムネをより美しくみせる、花のあるデザインでした。

八智代さんと横松さん
場所提供:ムトー商店
スワンラムネ(通称:Kラムネ)
スワンラムネ(通称:Kラムネ)
フルーラのグラフィックデザインを担当した八智代さん

チャレンジ、チャレンジ、チャレンジ。

「女性らしいボンキュッボンな体のラインを出すために、ラベルの黒色の面を斜めに入れたり、ラベルの紙質もパール調の光沢があるものを選んで。当時、企画開発メンバーは男性ばっかりやったけん、サンプルを作って見せたっちゃけど…『シマシマってタイガースぽい』とか『ラムネにここまでする?』とか」。八智代さんが自信を持って提案したラベルに対して反応は今ひとつ…それもそのはず、当時キャップシールには賞味期限を印字していたため黒はタブーとされていた色。また光沢のあるラベルは化粧品業界のみで飲料に使われたことはありませんでした。ラベルだけでは、ありません。八智代さん達は、リキュールで女性から支持され始めていたフレーバー「マンゴー、ライチ、ラフランス」の三種類のラムネを提案してきたのです。「ジュースといえばリンゴ味、イチゴ味、オレンジ味などが主流の時代でしたから。どんな味か分からないスタッフもいたようですよ」と横松さん。さらに名前も「フルーツのラムネ」の略で「フルーラ」とつけたことで、ますますラムネだと分からないと反発する声も上がったと言います。そう、全てが前例のないチャレンジだったのです。

売れる売れないことよりも大切なこと。

横松さんの入社前の話ですが「当時のことを友田は大変だったと言いつつも、いつも嬉しそうに話してくれますよ。単に売れるだけだったら⚪︎⚪︎ラムネのイチゴ味にした方が売れてたかもしれません。でも大切なのはそこじゃなかったと」。どのターゲットにどんな商品をどんな味やデザインで出したら売れるのか?どこのメーカーでも企画会議で話し合い、データを分析、売上計画を出して最後は多数決で決めます。しかし、それで数字を取る商品はできても、これまでにない世の中を驚かせるような商品は生まれないのではないか…そんな想いが開発メンバーみんなの中にあったのです。

フルーラ フルーラ

売れる売れないよりも、シンプルに誰よりも自分たちが欲しいと思うものを作るべき。
こうしてひとつ一つの問題をクリアしていき「フルーラ」が完成したのです。しかし…